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新聞社説読み比べ part2 ~トランプ米大統領の円安誘導批判~

その日、同じテーマで論じた各新聞社の社説を比べ、分析してみる。

不定期更新のコーナー


今回注目したのは、2017年2月2日の社説テーマ・・・

トランプ氏、日本による円安誘導を批判

31日米トランプ大統領は、米国内の企業幹部との会合で「他国は資金供給と通貨切り下げで有利な立場をとってきた。中国や日本は何年も通貨安誘導を繰り広げている」と日本の為替政策を強く批判し、10日に開かれる日米首脳会談で、為替政策が論点となる可能性が浮上した。

米大統領が主要国の為替政策を名指しで批判するのは異例であり、安倍首相や菅官房長官らが反発している。

このニュースについて、朝日、読売、日経、産経が同日の社説テーマとして取り上げられていたので比較してみる。

朝日新聞の見解

為替介入が念頭にあるとすれば、明らかに事実誤認だ。

日本政府は「日本の金融政策はデフレ脱却という国内政策が目的で、為替を念頭に置いたものでは全くない」と反論。

目的は政府の指摘通りだが、そうした政策が円安を伴い、日本経済が恩恵を受けているのも事実であり、日本政府は丁寧に説明を続けていく必要がある。

起点になるのは、これまでの国際的な合意である。

昨年のG7では、各国が成長の回復に努め、中央銀行は低インフレの克服に取り組むことが確認されていると同時に、為替水準を目標にしないことや、通貨の競争的な切り下げを回避することもうたわれ、日本だけでなく欧州や米国でも異例の金融政策が実行されてきた。

日銀の政策には問題もあるとは言え、米国からの一方的な批判は筋違いであり、トランプ氏は過去の国際的な合意を踏まえるべきだ。

もちろん、現在の枠組みが最善とは限らないが、互いの利益をさらに増す提案をするような姿勢がうかがえない。

しかし、トランプ政権は二国間の貿易交渉に為替条項を盛り込む姿勢を示し、ユーロ安を理由にドイツにも矛先を向け始めた。

こうした振る舞いが続けば、国際的な経済関係が漂流しかねないかつ、米国の利益にもならないことを自覚すべきだ。

読売新聞の見解

為替相場は各国の基礎的な経済条件に基づき、市場の自由な取引で決まることを全く理解していないのではないか。

日本の為替政策が円安を狙っているとするトランプ氏の見解は事実に反し、菅官房長官が、「批判は全く当たらない」と明確に反論したのは当然である。

日銀が継続する大胆な金融緩和は、着実なデフレ脱却が目的であり、円安誘導批判は筋違いである。

そもそも、トランプ氏が問題視する現在のドル高は、景気回復を受けて段階的な利上げを実施し、日米の金利差が拡大したのが要因だ。

持論に沿わない事実から目を背け、一方的な理屈で相手を威嚇するトランプ流は危ない。

基軸通貨ドルを担う米大統領が軽々に口先介入し、市場に動揺を与えていては、世界経済に悪影響を及ぼそう。

トランプ氏は、自らの発言の重みを十分に認識すべきだ。

日本経済新聞の見解

日本は過去5年間、為替市場の介入をしておらず、明らかな事実誤認である。

大統領発言の真意は不明だが、昨年秋から為替市場でドル高傾向が強まっていることに不快感を示したものとみて良いだろう。

しかし、まず理解すべきなのは、米国経済の改善がドル高の要因という点である。

なぜなら、減税やインフラ投資など、新政権の財政刺激策が実現すればこうした動きも加速し、米利上げを一段と促す要因にもなるからだ。

米国が利上げをする一方で、日銀が緩和政策を継続していることが結果的に円安に繋がっているのも確かであるが、日銀の金融政策は米欧の中央銀行と同様、自国の経済や物価を安定させることを目的に運営されており、批判は筋違いである。

強い権限を持つ米国の大統領が為替市場や金融政策について気ままに発言すれば、金融市場の先生きに不透明感が高まるのは必至だ。

したがって、為替問題に関する発言は、財務長官などマクロ経済政策の責任者に委ねるべきである。

為替政策を巡る今回の発言の根っこにあるのは、日中等の対米黒字国が米国の雇用を奪っているという誤った認識であり、2国間の収支を強引に均衡させようとしても、雇用などの改善には繋がらないだけでなく、輸入品価格上昇などを通じて家計の負担拡大になるだけだ。

重要なのは貿易の帳尻合わせではなく、両国間の貿易や投資を拡大することであり、こうした原則について米国側の理解を促すことが肝要である。

産経新聞の見解

トランプ大統領が日本を名指しして、円相場を安易に誘導していると批判したことは、ドル高を全て他国のせいにする言いがかりである。

トランプ氏は各国の通貨安誘導が米国に不利益をもたらす見解を示し、日本批判は予想されていた面もあるが、理のない批判を悪びれずに展開することは呆れて失望する。

安倍首相が「批判は当たらない」と反論したのは当然である。

トランプ氏がこの問題を取り上げること自体、為替への無理解がもたらす口先介入妥当とも見過ごすわけにいかない。

安倍首相は今月10日の日米首脳会談で、不当な要求には応じられないという考えを明確に伝えるべきである。

足元のドル高は、利上げに転じた米国と、金融緩和を続ける日欧の金利格差拡大などに起因する。米政権のインフラ投資や減税に期待してドルが買われていることに目をつむり他国を批判するのは筋違いだ。

日本は、東日本大震災後の円高局面で円売り・ドル買いの介入を行った平成23年を最後に市場に介入しておらず、恒常的に為替相場を操作している国と同列視されるのは迷惑である。

為替相場が経済の実態からかけ離れ、契機に深刻な悪影響を与えるほどドル高が行き過ぎているというのなら、多国間の舞台で国際的に強調しながら対処すべきであり、その様な道筋を経ず基軸通貨国である米国が2国間交渉で強引に相場を動かそうとしても、市場の混乱を招くだけとなるだろう。

まとめ(個人的な感想も含む)

就任からおよそ2週間の米国内の荒れっぷりは、大方予想通りか予想より少し早いのかなと感じるところです。

今回は、各紙の共通見解部分が多くあり、一つずつ比べてみようかと思います。

  • 米大統領の「円安」批判は事実誤認

米大統領が為替介入を念頭に批判しているとことは、明らかな事実誤認であること。が4紙の共通見解であり、

読売は「為替相場のことを全く理解していない」と表現し、産経は今回のことを「言いがかり」と表現している。

各紙、この円安批判に批判的な内容で論じていることには変わらない。

では、なぜこの様な批判が出てきたのかという背景について各紙では、

米国経済の景気回復を受け、段階的な利上げを実施したことによるドル高要因であると指摘している。

さらに詳しく見ると・・・

朝日「昨年のG7では、各国が成長の回復に努め、中央銀行は低インフレの克服に取り組むことが確認されていると同時に、為替水準を目標にしないことや、通貨の競争的な切り下げを回避することもうたわれ、日本だけでなく欧州や米国でも異例の金融政策が実行されてきた」

読売「日銀が着実なデフレ脱却が目的のための金融緩和と、米国が段階的な利上げを実施したことによって日米の金利差が拡大した」

日経「減税やインフラ投資など、新政権の財政刺激策が実現する動きが加速すると米利上げを一段と促す一方で、日銀が自国の経済や物価を安定させるために緩和政策を継続した結果である」

産経「利上げに転じた米国と、金融緩和を続ける日欧の金利差拡大と、米政権のインフラ投資や減税に期待してドルが買われている」

それぞれの要因を述べた上で、米国からの一方的な批判に対して「筋違い」と指摘している。

  • 日本の反論

朝日、読売、産経は日本側の反論について述べていますが、、、

朝日は、日本政府は「日本の金融政策はデフレ脱却という国内政策が目的で、為替を念頭に置いたものでは全くない」と反論

読売は、官房長官、「批判は全く当たらない」と明確に反論

産経は、安倍首相が「批判は当たらない」と反論

各紙反論している人が違うという点である。

反論している人が別々でも安倍首相と菅官房長官は同じことを言っているのに対し、政府としての反論内容が前者2人と異なっていることに少し疑いを持った。

ただし、一個人の意見と政府全体の意見、どちらかに偏らず、信ぴょう性があるのと言えば後者の意見になるのではないのかと感じた。

しかし、日本側の反論に対して、朝日のみこの様に指摘しています。

目的は政府の指摘通りだが、そうした政策が円安を伴い、日本経済が恩恵を受けているのも事実であり、日本政府は丁寧に説明を続けていく必要がある。

日本も恩恵を受けているので、ただ反論するだけでなく、ちゃんと米に丁寧な説明を続けていくことで誤解を解いてくださいというメッセージが含まれていると感じます。

これにトランプ氏がちゃんと聞く耳を持つのかは甚だ疑問です。

  • 為替政策を巡る発言

今回の為替政策を巡る発言について、日経のみ誤った認識と大統領が発言するものではないと指摘しています。

誤った認識とは、日中等の対米黒字国が米国の雇用を奪っていることであり、為替問題に関する発言は、財務長官などマクロ経済政策の責任者に委ねるべきと大統領は口を出すべきではないと指摘しています。

しかし、ここで気になったのが為替問題に関する発言が財務長官などのマクロ経済政策の責任者

一体誰なのでしょうか?

調べてみると、現在の財務長官はスティーブン・ムニューチン氏

アメリカ金融大手「ゴールドマン・サックス」大幹部でありますが、政治経験は全く無し。

トランプ氏は、ムニューチン氏について「ワールドクラスの財政家、銀行家、ビジネスマンだ」としたうえで、これまでの選挙戦で「数百万の雇用を生む経済活性化に向けた計画をつくるうえで、重要な役割を果たしてきた」と説明している模様。

政治経験は素人でも金融に関しては敏腕な模様であるため期待するべきか否かは分からないが、この人に委ねても米国内はともかく世界経済が混乱するのは間違いないと思う。

  • 現在のドル高が為替相場の原因なら、2国間ではなく多国間で対処すべき

朝日、産経が取り上げているが、両紙視点が異なる。

朝日「過去の国際的な合意を踏まえるべきだ」

産経「為替相場が経済の実態からかけ離れ、契機に深刻な悪影響を与えるほどドル高が行き過ぎているというのなら、多国間の舞台で国際的に強調しながら対処すべき」

朝日は過去の合意に視点を置いているのに対し、産経はこれから対処すべきと未来の視点で書いている。

しかし、このまとめでは、朝日、産経、そして日経はこう締めくくっている。

朝日「こうした振る舞いが続けば、国際的な経済関係が漂流しかねないかつ、米国の利益にもならないことを自覚すべきだ」

日経「2国間の収支を強引に均衡させようとしても、雇用などの改善には繋がらないだけでなく、輸入品価格上昇などを通じて家計の負担拡大になるだけだ」

産経「その様な道筋を経ず基軸通貨国である米国が2国間交渉で強引に相場を動かそうとしても、市場の混乱を招くだけとなるだろう」

要するに、2国間交渉で為替相場を動かしても、世界市場どころか米国にもメリットが無いことを言っている。

益々、トランプ氏は何がやりたいのか理解不能である。

自国以外信用できる場所が無いとういうことはよくわかる。

しかし、米国にメリットの無いことを行うことがアメリカンファーストなのか?

そうだと思うからこのような発言が出るとは思うが、果たしてどういう結果になるのか予想できないのが本音である。

  • 重要なのは貿易の帳尻合わせではなく、両国間の貿易や投資を拡大すること

これを述べているのは、日経だけである。

そのあとにこう続けている。

「こうした原則について米国側の理解を促すことが肝要である」

要するに、次の会談(10日に予定している日米首脳会談)で為替相場の原則について米国の大統領に一から説明しなければならないということ。

小学生からの為替入門みたいなものを米国大統領に説明しなければならないというなんとも低レベルな会談なのか?

どこの国も一から説明するなんてなんとお人好しな国が多いのかと思う部分もあるが、経済に大影響を及ぼされてはたまらないので一から説明したほうが安全であると選択しそうなのが予想できる。

政治経験のない一ビジネスマンがどこまで国の舵を取れるのか、第三者から見て楽しみな部分がありますが、一体10日の会談がどういう方向で行くのか注目すべきところであります。