新聞社説読み比べ part1 ~値下げされたタクシー料金~
その日、同じテーマで論じた各新聞社の社説を比べ、分析してみる。
不定期更新のコーナー
2017年2月1日の社説テーマは・・・
タクシーの初乗り料金が値下げ
東京ハイヤー・タクシー協会及び、東京都個人タクシー協同組合は、1月30日より東京23区・武蔵野市・三鷹市で初乗り料金が730円から410円に値下げされた。
新運賃は、初乗りから1.052kmまで410円となり、以後237mと、時速10km以下で90mごとに80円値上がる。
この適用により、初乗りから2km以下は実質値下げ。6.5km以上は実質値上げとなる。
このニュースについて、日本経済新聞と産経新聞が同日の社説でこのテーマを取り上げていたので比較してみる。
日本経済新聞の見解
需要創造を狙った戦略的な料金改定が成功するかどうか、東京のタクシーの挑戦に注目。
そして、今回の料金改定の狙いは新規需要の創造と、需要減による収入を補うために値上げし、更なる乗客離れを招く悪循環を跳ね返すための大胆な策である。
ただし、残された課題もある。
それは、丁寧な説明だ。
今回、走行距離が6.5kmを超える料金が値上げした。
そのため、新旧の全体像を分かりやすく示す努力が要る。
そして、東京以外での都市でも需要喚起の試みに期待したい。
IT(情報技術)を活用すれば相乗りサービスの様な新機軸が可能なはずである。
更に、需要過剰と言われたタクシー業界は、人手不足で状況が変わりつつある。
働き人の模力的な職場づくりと、再編統合による個々の企業の経営基盤を強めることも必要だろう。
産経新聞の見解
初乗り料金を値下げしたことによる利用者の選択肢が広がる料金体系は歓迎したい。
しかし、6.5kmを超える場合の料金は実質的に値上げされたため、中長距離を利用する乗客が恩恵を受けるような取り組みも同時に取り入れて欲しい。
また、厳しい経営環境を打開するために多様な料金体系だけでなく、利用者本位の質の高いサービスでも健全に競い合うことが欠かせない。
近距離でも気軽に使える料金に抑えることにより、外国人観光客や高齢者の身近な足としての新規需要を期待するが、利用者が気兼ねなく乗車できるように運転手向けの教育も徹底して欲しい。
今回、これを契機に「利用者から選ばれるサービス業」として改革を進める必要があり、一例として陣痛が始まった妊婦に優先配車するサービスをめぐっては、都内在住の出産間近の妊婦の多くが事前登録をしている。
従来は規制に頼りがちだったタクシー業界も、自らの努力で苦境を乗り切る知恵が求められる。
そして、今後外国人観光客の利用増を見込み、観光案内でも使える情報端末も導入するなど、乗客サービスの向上に努めることが真の「おもてなし」につながる。
まとめ(個人的な感想も含む)
今回のタクシー初乗り料金の値下げについて両社概ねの評価をしている感じを受けました。
そして両社の共通点は以下のとおりである。
- 料金値下げは新規需要の開拓である。
- 従来、規制は供給過剰と言われてきたタクシー業界も、今後は自らの努力と知恵によって経営基盤を強め苦境を乗り切ることが求められる
- IT(情報技術)を活用し、乗客のサービス向上に努めることも可能なはずである。
各社とも前半は利用者目線、後半は経営者目線で述べているのが印象的であった。
個人的には、今回の値上げは東京の一部のみの実施ということもあり、実験的な要素を感じる。
今後、この施策を地方に波及できるかが焦点となる。
日経は、「東京以外の都市での需要喚起の試みに期待している」と述べている。
しかし、地方の場合は近距離よりも中長距離がメインとなる可能性が高い。
したがって、この値下げが本当にタクシーの新規需要の獲得に繋がり、収益が上がるかどうは慎重に考える必要がある。
そもそも、都内では近距離に複数の駅が存在している場所も多く幹線道路の混雑等を考えると徒歩で移動する方が早いのではと感じるが、足の不自由なお年寄り等が短距離の移動の際に気軽に利用しやすくなるのは良いことだろう。
最後に、話が脱線してしまうかもしれないが、タクシーの運転が荒いドライバーが多いと感じる。
都会でタクシーを乗ることはほぼ無いが、地方でタクシーに乗ると猛スピードでの走行や追い越し、舗装されていないとんでもない道を無理矢理走ったりするなど少し怖い場面に遭遇することもあるため進んで乗りたいとは思わない。
時間を短縮するため、料金を安くするためのドライバーの努力の賜物がこの様なことを引き起こしているかもしれないが、もう少し安全運転に努めて欲しいところもある。
そのためにも、中長距離客が気軽に利用できる料金体系等のサービス向上にも努めて欲しいと願っています。