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真面目系ひねくれニュース

真面目なんだけどひねくれた性格を持った人がひねくれた視点でニュースなどを斬る

新聞社説読み比べ part3 ~入国禁止の大統領令に連邦控訴裁が政権側の不服申し立て退ける~

その日、同じテーマで論じた各新聞社の社説を比べ、分析してみる。

不定期更新のコーナー


今回注目したのは、2017年2月11日の社説テーマ・・・

入国禁止の大統領令に連邦控訴裁が政権側の不服申し立て退ける

アメリカで7か国の人の入国を一時的に禁止する大統領令の即時停止を命じた仮処分の決定について、連邦控訴裁判所は9日、トランプ政権側の不服申し立てを退ける決定を出した。

裁判所は決定の中で、大統領令が急を要するテロとの戦いが目的であることは認めるとした一方で、政権側は取り返しのつかない損害を避けるために仮処分の決定の取り消しが必要だということを証明しておらず、大統領令にある7か国の人がアメリカ国内でテロを起こしたという証拠も示していないと指摘。

ワシントン州側については、もし一時的にでも大統領令が有効になった場合、州やそのほかの組織に与えるであろう多大な損害について十分な証拠を示していると評価した上で、今回の決定は審理を行った判事3人の一致した見解だとしている。

今回の判断で、大統領令の一時停止の措置は継続されることになり、7か国の人たちの入国は引き続き認められることになる。

このニュースについて、読売、毎日が同日の社説テーマとして取り上げられていたので比較してみる。

読売新聞の見解

トランプ米大統領の強権的な政治手法に対し、司法が待ったをかけたと言えよう。

国家の安全保障に関する問題について、大統領は不可侵の権限を持つわけでわなく、行政、立法、司法の三権分立は尊重されるべきであると厳しいメッセージが政権に送られた。

しかし、問題なのはトランプ氏がツイッターなどで司法判断を繰り返し、具体的な根拠を挙げずに、テロの脅威を煽っていることだ。

差し止めを決定した地方裁判官を「馬鹿げている」と貶め、「危険な悪人が米国に殺到してくるだろうと」と発信し、「何かが起きたら、彼と裁判制度を責めろ」とも言い放った裁判官に対する執拗な個人攻撃は異様である。

一連の言動からは、「裁判所は政権の立場に沿った決定を下すべきだ」という傲慢な考え方が透けて見え、司法のど独立を理解していないということだろう。

入国制限を巡っては、反対意見が過半数を占める世論調査も出ている。

自ら不利な調査結果や報道を「フェイク(偽)」と切り捨てていては、社会の分断の解消につながるまい。

発足から間もないことを差し引いても、トランプ氏の政権運営には、稚拙さが目立つ。

支持層に向けて、既存制度の破壊を「成果」として誇示する戦術も再考する時ではないか。

毎日新聞の見解

米国の司法がトランプ大統領の暴走を止めた格好である。

大統領令自体がいかにも拙速で乱暴だったからだ。

特定の国々の対象に突然ビザを無効にすれば世界が混乱するのは当然である。

そんな状況が目に見えているのに大統領令は強行された。

今回、裁判所が行政命令の適法性を判断するのは当然だという控訴裁の見解は、極めて常識的である。

どうやら、トランプ大統領は司法より大統領の意思が優先すると考えているらしい。

三権分立に対する根本的な誤解がありそうだ。

とはいえ、世論調査で大統領令を支持する米国民も少なくなかったことは、移民や難民とテロをめぐる問題の難しさを物語る。

2001年の米同時多発テロ以来、米国民は自分たちの安全を考え続け、今なお揺れているのだろう。

だが、米国内のテロ予備軍も多いとされる中、やみくもにイスラムの世界に門戸を閉ざすのは正しい道とは思えない。

多様な意見に基づいて出直すべきである。

拙速な大統領令にこだわって法廷闘争を続けても、米国の孤立と国内外の分断は進むばかりだ。

まとめ(個人的な感想も含む)

大統領令に「待った」を連邦控訴裁がかける自体異例のことであるし、大統領が司法に突っ込んで勝負するのも異例中の異例。

異例だらけの米国ですが、果たして各紙どの様に見解を述べているか比較してみる。

  • 2紙の共通見解

今回も共通見解の部分が多いので、順に紹介していきます。


(1)米国の司法がトランプ大統領の政治手法を止める

各紙、冒頭の文章表現が少し異なりますが、書いている意味は変わりません。

これを両紙冒頭に示していることに、司法がストップをかけたこと自体に通常では有り得ないことが起きていると伝わる一文だと感じる。

私も、こんなの当然であると思う反面、過去に司法が大統領に向かって待ったをかけることなんてあったのか?と疑問に思って調べてみると・・・

司法が待ったという大統領令の記述が無い。

しかし、過去には物議を醸した大統領令がありました。

それは、1861年7月2日リンカーン大統領が発令した「による人身保護令状の差し止め」を命じていました。

しかし、憲法上では「人身保護令状の差し止めを出来るのは、連邦議会のみ」と規定されていました。

ただし、この時期はちょうど南北戦争が始まったばかりであり、緊急の措置とは言え物議をかもしたものであります。

そして、もう一つ1942年2月19日フランクリン・ルーズベルト大統領が発令した「防衛のための強制移動の権限」。

この大統領令は、前年12月7日に日本が真珠湾を攻撃したことにより日米が開戦状態となり、諜報活動や軍事活動妨害の阻止を目的として発令された。

特定地域を軍管理地域に指定された地域の罪のない日系人の立ち退きを実施し、約10万人以上が強制収容所収監された。

しかし、強制収容所に移るのを拒否した日系人の一人が逮捕され、逮捕の正当性について裁判が行われた。

その結果、特定の人種集団から市民的自由を奪うことに対して疑念を示しながら、この強制収容について「軍事的必要性」を認めた。

後に、大統領の自由裁量権について問題を突きつけた形となりました。

それが、今回のトランプ氏についても自由裁量権の範囲について、司法がどこまで待ったをかけられるかが注目されました。

ただし、過去2つについては共に戦争中であったための特殊な事情がありますが、今回は特殊な事情がない状況でこの様なことになっているのは、やはり「異例」と言って良いかもしれません。

(2)大統領令自体が拙速で乱暴で、裁判官に対する執拗な個人攻撃は異様である
読売は裁判官の個人攻撃に違和感を持っているのに対し、毎日は大統領令自体が乱暴であり、控訴裁の見解は極めて常識的であると述べている。

表現と視点が少し異なる部分もあるが、最終的に両紙この様に結論を出している。

(3)三権分立(司法の独立)に対する根本的な誤解
読売はトランプ氏の傲慢な考え方から「司法の独立を理解していない」と論じ、毎日は司法より大統領の意思が優先すると考えているらしく三権分立に対する根本的な誤解がありそうだ」と論じている。

もしかして、トランプ氏は「三権分立」を知らないのではと醸し出している文章である。

実際にありえそうで怖い部分もあるが、三権分立は中学校でも習うものであり、中学生の基本レベルのことすら知らない人が大統領になってしまったのかと感じる部分がある。

トランプ氏のネガティブキャンペーンが多すぎるかも知れないし、この機会に1から習うのも良いかもしれないが、混乱は必須であることには間違いない。

ただ、両紙はこんなことも理解していないのかとびっくりしているとも読み取れます。

(4)米国内の世論調査
両紙同じことを書いているように見えて、若干意味が変わっている部分があるので取り上げてみました。

今回の入国制限を巡る世論調査について、読売は「反対意見が過半数を占める」と表現する反面、毎日は「大統領令を支持する米国民も少なくなかった」と表現しています。

この違いに違和感を感じたので実際に調べてみました。

この世論調査について各メディア等が独自に調査した結果を見つけたのでご紹介します。

・ロイター通信の調査
賛成:49% 反対:41%

・ギャラップ社の調査
賛成:42% 反対:55%

・CNNの調査
賛成:47% 反対:53%

・上記3社平均
賛成:46% 反対:50%

ん?読売が書いている様な反対意見が過半数を占めているようには見えません。

ほぼ同等ではないのかなと思う次第です。

毎日が書いたような「大統領令を支持する米国民も少なくなかった」ことは、この調査を見る限りほぼ事実であることが分かると思います。

読売の表現が少し行き過ぎている感じもします。

この後、毎日はこのように記している。

「移民や難民とテロをめぐる問題の難しさを物語る。2001年の米同時多発テロ以来、米国民は自分たちの安全を考え続け、今なお揺れているのだろう。」

これが、アメリカ国内の本心であり、分断している要因の一つにもなり得る材料であると感じます。

ここまで両者拮抗していると本当に1つの国をまとめることが出来るのか?疑問に思うこともありますし、一つにまとまっても蟠りが残ってしまいかねない難しい状況になっていることは間違いありません。

本当は、トランプ氏が両者の意見を受け入れることから始めなければならないと思いますが、当の本人がそんなことする気がさらさら無いのは今までの言動から見ても分かることです。

これが、ヒラリー・クリントンになっても、オバマ大統領が3期目にもし入ったとしても状況は変わらず、難しい判断を迫られることになるのは予想できます。

(5)テロの脅威
両紙テロの脅威について述べている部分があります。

しかし、その驚異となっている視点が若干異なったいるのを紹介します。

ますは、読売。

読売は、ツイッター等で司法批判を繰り返し、具体的な根拠を挙げずに、テロの脅威を煽っていると記されてあり、テロの対象が書かれていません。

しかし、毎日では米国内のテロ予備軍も多いとされる中、やみくもにイスラムの世界に門戸を閉ざすのは正しい道とは思えないと記しています。

毎日では対象が自国内のテロ予備軍。

つまり、ホームグロウン・テロの脅威を恐れている部分があると感じます。

したがって、イスラム圏の人を入国制限してもテロ対策として意味がないというのも一理あるのかなと感じます。

  • 最後に・・・

今社説の締めとしてトランプ政権に向けてこんなメッセージがあります。

読売は、発足から間もないことを差し引いても稚拙さが目立つ。戦術も再考する時ではないか。

毎日は、多様な意見に基づいて出直すべきである。大統領令にこだわって法廷闘争を続けても米国の孤立と国内外の分断が進むばかりだ。

両紙とも再考と出直しを要求しています。

政権発足からまだ一ヶ月経っていないのに、ここまで暴走するのも前代未聞ですが、ここで方向転換を求めてもトランプ氏のプライドが許さないであろうと感じます。

しかし、今回の大統領令の賛否もほぼ半々であることも加味して本当に米国内の分断がかなりの速度で進んでいると感じます。

本当にどうなることやら、今後の動向に注目しなければいけない時期であることは確実です。